TAKAHASHI HIROKO for ISETAN -Mounumental-
明日3月5日より、伊勢丹新宿店本館4階=ジュエリー&ウォッチにて、私が手掛けた伊勢丹オリジナルブライダルリング「TAKAHASHI HIROKO for ISETAN -Mounumental-」の常設販売が始まります。
初めてジュエリーを手掛けるということもあり、ダイヤモンドの流通や、ブライダルリングの歴史を調べているうちに出会ったのが、50年以上前のエンゲージリングの原型でした。
ダイヤモンドのエンゲージリングが日本で定着したのは1960年代と言われています。
それより以前の1950年代は、ダイヤモンドが今以上に大変高価なものでした。
ちょうど1ドルが360円の時代。大きなダイヤモンドを手にすることができる人は多くなかったのだと思います。
たとえ小さくても美しく輝くダイヤモンドリングを贈りたい、身につけたいという思いを叶えるセッティングが生まれたのもこの頃。
反射板のようなデザインでダイヤモンドに光を集め、大きな爪で留めるセッティングは、現在の流行ではありません。
しかしながら、光を多く取り入れることでより強く大きく輝くようにと、ダイヤモンドを高く持ち上げたそのスタイルは、高度経済成長期の日本のポジティブな姿を現しているかのようで、私にはとても印象深く新鮮に映りました。
梅の花や牡丹など、日本の花をモチーフにしたデザインもあり、当時のエンゲージリングはとても日本的かつ独創的なスタイルだったのです。
先人が残してくれたものの良い部分、今の時代に必要な部分を見極め、引き継ぐこと。
それは、結婚という節目に(本当はいつでも!)自分自身の存在に向き合い湧き起こる、両親や祖先への感謝の気持ちに似ていると感じたのです。
職人の手により丁寧に作られた当時の原型は、どこかぬくもりがあり、金属でありながら冷たさを感じません。道具の機械化が進み、今ではこのようなスタイルの原型を同じように作れる人は数少ないと聞きました。また、大きく特殊な爪にダイヤモンドを留める石留め職人も貴重な存在だそうです。
これからの長い時間を共に歩むブライダルリングだからこそ、自分だけではない他者のぬくもりを感じるものであってほしい。人は皆、誰かに支えられて生きているということを忘れず、いつも誰からも長く愛される人であるべきなのです。
そして、私が生み出すブライダルリングの存在が、その人自身を引き立てるものであってほしいと考えました。
物の本質を浮き彫りにするためには、対極にあるものや相対的に見ることができる存在が必要です。花やリボンやハートモチーフのように、それ自体女性らしいものが、必ずしも女性らしさを引き出すとは限りません。時にメンズライクな帽子やシューズが、女性らしさを出すこともあるのです。
今回のリングは、50年前の原型にインスパイアされたセッティングに、女性の優しさや柔らかさを引き立てる対極のものとして、鋭さをや強さ感じるモチーフであるスタッズを組み合わせました。
一見異質な表現が組み合わされたこの “Monumental ”シリーズは、未来を切り開く力強さを持ちながら、時を超えて愛される女性像をイメージしています。
ブライダルに限らず、大切な時を共に過ごすジュエリーのひとつとして、お選びいただければ嬉しいです。